伊豆半島西側の先端に位置する「静岡県 松崎町」。面積の約6割が森林の覆われており、自然豊かな土地で知られています。約370枚の棚田が広がる絶景スポットをはじめ、なまこ壁と呼ばれる漆喰、明治時代に名を馳せた左官工など、歴史深い一面にも触れることができます。今回は、そんな静岡県松崎町の観光名所を5箇所ご紹介します!
なまこ壁通り
新しき時代の幕開け、商売繁盛した商人の証
松崎町に根付く歴史を感じたいなら「なまこ壁通り」がおすすめです。なまこ壁とは、壁面に平瓦を並べて貼り付け、継ぎ目の部分に漆喰をかまぼこ型に盛り付ける左官工法のこと。防火や防湿に優れており、裕福な商人の家や土蔵を覆う外壁に使われていました。
江戸時代末期から明治時代にかけて盛んに取り入れられ、松崎町には当時の姿のまま現存する建物が点在。他所では出会えない、文明開化の一面を覗くことができます。
例えば、明治初期に建てられたとされる「近藤邸」。
薬学者・近藤平三郎の生家として有名で、至る所に当時の面影を感じられます。なまこ壁を作るには相当な費用が必要でしたが、近藤邸は軒下を含む大部分に取り入られており、薬問屋として繁盛していた様子を伺えるでしょう。
また、明治43年に建築された「伊豆文邸」にも、なまこ壁で覆われた外壁が保存。無料休憩所として内部を見学することもでき、土間や帳場も残されています。そのほかにも、なまこ壁通りの付近には、歴史深い建物が現存しているので、ゆっくりと巡ってみてください。

【お問い合わせ】
0558-42-0745
※松崎町観光協会
【アクセス】
車:
東名高速道路「沼津IC」から国道136号経由2時間
【駐車場】
有り
8台(松崎町観光協会)
【ウェブサイト】
https://izumatsuzakinet.com/%E3%81%AA%E3%81%BE%E3%81%93%E5%A3%81%E9%80%9A%E3%82%8A/
長八美術館
松崎町が生んだ明治時代の名左官工
なまこ壁通りで明治時代を肌で感じたら「伊豆の長八美術館」にも訪れておきましょう。日本唯一の漆喰芸術専門の美術館です。
展示されているのは、松崎町の誇り・入江長八の作品。
明治時代に活躍した有名な左官工が手がけた、漆喰鏝絵(しっくいこてえ)と呼ばれる、漆喰を盛り上げて描かれる絵画を60点余り観ることができます。
美術館に入ると、まずは一人ひとりにルーペが手渡られます。
入江長八の技術はとても繊細!じっくりと観察して欲しいという、伊豆の長八美術館の小粋さを感じられます。漆喰で描かれる職人芸と華麗な色彩に酔いしれることでしょう。
また、美術館の建物自体も貴重。
建築家・石山修武が設計し、全国の左官職人が集って造り上げられたひとつの作品。もちろん、松崎町のシンボルであるなまこ壁も取り入れられています。

【お問い合わせ】
0558-42-2540
【営業時間】
9:00〜17:00
【定休日】
なし
【利用料金】
・大人:500円
・中学生以下:無料
【アクセス】
・電車:
伊豆急修善寺駅より松崎行バス乗車、松崎下車 徒歩5分ほど
・車:
東名高速道路「沼津IC」より三島経由国道136号線 松崎約72㎞
【駐車場】
有り
【ウェブサイト】
岩科学校
伊豆最古の学び舎に描かれる、美しい伝統作品
なまこ壁と入江長八の魅力について、もっと味わいたいなら「岩科学校」もおすすめ。伊豆最古の小学校校舎として有名な建物で、現在は国の重要文化財にも指定されています。
小学校が開校されたのは、明治6年(1873)。
もともとは天養院・常光院という寺院を学び舎として利用していましたが、明治13年(1880)に校舎が建てられて移動。それが、現存する岩科学校です。以来、昭和50年(1975)に至るまで、子どもたちが勉学に励んでいました。
平成4年に内装や外装が復元。
注目すべきは建物の造りで、文明開化の明治時代を象徴するかのように、和風建築と洋風建築が上手く融合しています。白い漆喰で覆われた外装には、なまこ壁も見られますよ。
また、2階にある西側の居間には、入江長八の作品が現存。
欄間に描かれた漆黒鏝絵があり、青空に舞う鶴の姿が描かれています。そのほか、天井には鳳凰が描かれた漆黒鏝絵もあり、こちらは作者不詳の作品。伊豆最古の小学校に刻まれる、歴史の残り香を多能してはいかがでしょうか。

【お問い合わせ】
0558-42-2675
【営業時間】
9:00〜17:00
【定休日】
なし
【利用料金】
大人:300円
中学生以下:無料
【アクセス】
電車:
伊豆急「蓮台寺駅」からバス
車:
東名高速道路「沼津IC」より三島経由国道136号線 松崎約72㎞(下田より27㎞)
【駐車場】
有り
普通車20台分
【ウェブサイト】
石部棚田
約370枚の棚田が広がる、日本国内でも貴重な景勝地
松崎町の絶景スポットといえば、石部棚田。
標高120m〜250mの斜面に、約370枚、約4.2haの棚田が広がる、全国的にも珍しい名所です。
平地の少ない日本ならではの、階段状に作られる棚田。
伊豆半島も例外ではなく、石部地区に住まう人々は長い年月をかけて棚田を作り、守り、伝えてきました。一朝一夕で作ることはできず、何百年もかけて築き上げられるもの。昭和30年代には、総面積10haに数千枚もの棚田が作られていたそうです。
しかし、棚田はどうしても面積が狭く、農耕機械を使うのが難しい形。
農作業の効率化を図るため、また、農業人口の減少により、国内の棚田は徐々に姿を消していきます。そのなかで、石部棚田のように現存している棚田はとても貴重。素晴らしい日本の原風景を後世に残していくために、県内外の守り人が奮闘しています(守り人=オーナーも募集中です)。
石部棚田は絶景スポットとしても有名!
棚田の上部には展望台が設置されており、天候に恵まれれば、駿河湾の先に富士山や南アルプスも望めます。水面に輝く光が美しい棚田とのコラボレーションを体験できますよ。

【お問い合わせ】
0558-42-0745
※松崎町観光協会
【アクセス】
・電車
伊豆急「下田駅」からバスで50分
・車:
東名高速道路「沼津IC」から約120分
【駐車場】
有り
【ウェブサイト】
伊那下神社
樹齢千年のイチョウを携えた、歴史深い神社
森林に囲まれた土地、松崎町。
歴史深いスポットが多数点在していますが、ふらりと立ち寄ってみたいのが「伊那下神社」です。
長い歴史を持つ伊那下神社。
江戸時代までは「唐大明神」と呼ばれていました。古事記や日本書記に登場する「神功皇后」が新羅(朝鮮半島の国)討伐から帰るとき、船を守っていた唐の国人が建築したことに由来。つまり、古事記が編まれた数千年前から鎮座していたと考えられます。

境内は木々に覆われており、一際目を引くのが大きなイチョウです。
高さは22m、幹の太さは8mあり、樹齢千年を超えると推定され、静岡県の天然記念物にも指定されています。
また、「神明水」と呼ばれる水が湧き出ているポイントも。
伊那下神社の摂社に当たる「龍谷水神社」には水神が祀られており、清らかな湧き水を汲むことができます。健康長寿にご利益があるとされ、多くの人が参拝。寄り道散歩の喉を潤すためにも、お参りしてみてはいかがでしょうか。

【お問い合わせ】
090-7919-7780
【営業時間】
9:00〜17:00
※社務所
【アクセス】
・バス:
松崎バス停より徒歩12分
・車:
修善寺道路「修善寺IC」より国道136具経由で約70分
【駐車場】
有り
6台
【ウェブサイト】
いかがでしたか?
今回は、静岡県松崎町の観光名所を5箇所ご紹介しました。
なまこ壁と呼ばれる独特の漆喰技術をはじめ、松崎町が生んだ明治の名左官工の芸術作品、広大な土地に段々と広がる棚田など、心が豊かになるスポットが点在。趣深い歴史がひっそりと根付いています。森林に囲まれた豊かな土地で、穏やかな時間を過ごしてはいかがでしょうか。